火縄銃の威力と射程
さて本日のテーマは「火縄銃の威力と射程」というテーマでお話ししようと思います。
火縄銃の威力と射程っていうのは、度々聞かれる質問だったりするので
今日はそれについてお話しします。
火縄銃の威力と聞きますと、昔の武器だし大したことないんじゃないの?っていう風に思う方も結構多いと思います。
実際ですね、現代の銃と比べると確かに有効射程距離だったり命中精度っていうのは劣るところはあります。
だけど、火縄銃が登場した当時(戦国時代ですね)は画期的な武器であったことには間違いありません。
今の時代でも相当な威力です。
なので今回はその威力と射程についてお話ししていきます。
まず威力ですね。
結論から言いますと、鎧は貫通します。
歴史群像編集部及び日本前装銃射撃連盟による2005年に行われた実験があるんですけど、その実験では
厚さ1 mm の鉄板を貫通しました。
あ、ちなみにその時の距離はですね50 M ですね。
(普段の射撃大会とかの距離と一緒です。)
で、1 mm の鉄板を2枚重ねた場合(同じく50 M の距離で)は
貫通はしなかったんですけど、内部に鉄板がめくれ返っており、
足軽の胴丸に命中した時は深刻な被害を与えたのではないかと考えられています。
貫通はしなかったけど内側に鉄板がめくれ返っちゃうぐらいの威力だったと。
鉄板がめくれ返るって事は、
もちろん内側には普通の肉体がありますから、そこにどういう被害を与えたのかってのは簡単に想像がつきますね。
ちなみになんですけど、1ミリの鉄板を1枚置いた場合と、1ミリの鉄板を2枚重ねた場合(先ほど貫通しなかった方ですね)
距離30 M でこれを撃った場合はどっちも貫通しています。
30 M ってね、意外と近いですね。
当てるのは難しいですけど、でもその距離で撃ったら貫通しちゃうんですよね。
後は、厚さ48ミリの檜(ひのき)の合板に約36 mm 食い込んだ、そして背面に亀裂を生じさせたという結果も残っています。
なかなかですね、48 mm (5センチ近い厚さ)の板に半分以上食い込むと相当ですよね。
ちなみになんですけど、このとき使用した火縄銃は口径9 mm、 使用した火薬量は3グラムでした。
口径9 mm っていうと実際の玉の大きさは8.8とか8.9とか多分それぐらいになると思うんですよね、結構小さい方だと思います。
普段射撃やってる自分が思う限り、そんなに大きい玉ではないですね。
僕が射撃競技で使っている玉の大きさは、11 mm あるかないかぐらいの大きさなので
それよりちょっと小さいですね。
火薬の量は同じで。す3グラム使ってます。
鎧が貫通するっていう根拠なんですけど、さっき鉄板1 mm とか貫通したって言いましたが
戦国時代、兵士は鎧・甲冑などの防具を着ていました。
ただ、その鎧は当時そんなに厚い鉄板ではなかったので、やっぱり暑さは1ミリから2ミリぐらいと言われています。
大将とか、位がどんどん上にいけばいくほどやっぱりそれなりに丈夫な鎧だったりするんですね。
シンプルに鉄板だけの鎧ではなくて、鉄板に紐がついていたりとか、縅糸(おどしいと)って言ったりするんですけど、それがついていたり、
漆が塗ってあるとか…まあ鉄板に漆っていうのもあると思うんですけど、皮に漆とかね。
いろいろと工夫が凝らされているので、普通の鉄板よりかは丈夫だったとは思うんですけど
最前線で戦っている足軽とかはですね、やっぱり一つの鎧にそんなにお金かけられないので、
あとは動きやすくないとやっぱダメなのでね、そんなに立派な甲冑は着れないですね。
そうなってくると、やっぱり防御性能ってのは正直、気休めなのかなと思っています。
50 M 以内に引き付けて火縄銃を撃たれてしまうと、やっぱそれなりですよね。絶大な威力を発揮していたと思います。
何の資料で読んだのかちょっと忘れてしまったんですけど
「火縄銃を運用する上での心得」みたいなのがありまして
(一つの運用方法のひとつだと考えて下さい。皆が皆そういう使い方するわけじゃないです)
向かってくる敵兵の黒目と白目の区別ができるまで引きつけて撃て
という指示というか運用方法ですね、を見た記憶があります。
仮にですよ、昔の人の視力がものすごく良かったとしても
迫り来る敵兵の黒目と白目が識別できるぐらい近づいてから撃つっていうのは、相当近くまで引き付けてると思うんですよ。
それこそ30 M …もっと近いんじゃないかなと思います。
本当にそう考えるとですね、その距離で撃たれると鎧は意味なかったんじゃないかな、と思ったりします。
もちろん、そんなに引きつけて撃ってしまうと、次の玉を込める時間はありませんので
火縄銃といえども一発で必中させるというのは、やっぱり最低条件だったと思います。相手を倒すという意味では。
よく”下手な鉄砲数うちゃ当たる”じゃないですけど、たくさん撃てばそれなりに確率は上がると思うんですけど
当時においては結局一発外したら次の装填時間がかかってしまうので、一発で必ず仕留めなさいっていう
そういった感じだったんでしょうね。
他にも実験が行われていまして、
1981年頃に行われた「別冊GUN」という本の実験では、
3匁(もんめ)ずつ、大体口径が約12ミリ、重さが11.3 G ぐらいの弾丸を発射した場合、
初速(銃口から弾が発射した時の速度ですね)、一番最初の速さが秒速330 M 程度だったということです。
口径12 mm で11.3 G の玉を発射した場合、初速は秒速330 M。
この速さは、たぶんピンとこないと思います。
その初速のことを”銃口エネルギー※”と言ったりするんですけど、
これはですね、現代銃の初速に換算した場合、(これも専門用語になってしまうんですけど)”ショートコルト”とか”ロングコルト”っていう名前の銃があるんですけど
初速とあまり変わらないという結果でした。
つまり、初速がそんだけ早いってなると、射程距離内においては火縄銃も現代銃もそんなに変わらないよということです。
射程距離はやっぱり、現代銃の方が距離は長くなってしまうんですけど
射程距離に入ってしまえば、威力に関しては現代銃も火縄銃も、遜色はないとはそういうことですね。
次は射程について。
もともと火縄銃っていうのは、専属の鉄砲を撃つ専門の兵士もいたんですけど、
基本的にというか、信長が運用していた頃は、本当に大量の鉄砲を使ってました。
なので、そうなってくると鉄砲のプロを育てるのには時間がかかってしまうので、農民とかの足軽、そういった人たちに火縄銃を持たせて使っていた例もあります。
なんでかって言うと、弓に比べると技術がいらないんですよね、火縄銃っていうのは。
本当にある程度、構えて留めておけるだけの筋力と、引き金を引くだけの指先の筋力があれば、あの本当に誰でも扱えます。
なので、戦に慣れていない人でも戦闘能力を爆上げさせることができるんですね。
一発当たれば倒せるわけですから、戦ったことなくても扱えるわけです。
なので、農民などの戦闘経験がない人に持たせたとしても、軍の戦闘能力を上げることができます。
当時、貸し出しで使われてた銃の大きさが、2匁半から6匁と言われています。
2匁半というのはだいたい口径が11.79 mm、6匁が15.79 mm だったりするんですけど
11.79ミリ~15.79ミリぐらいの口径の火縄銃を持たされていました。
これぐらいのサイズの火縄銃だと有効射程距離(威力がある射程距離ですね)が大体200 M までと言われています。
要は、200 M 先の敵だったら貫通する威力を保ったまま発射できる。
それより先になっちゃうと、届くかもしれないけど威力はないよと、そういうことですね。
さっき言ったように、有効射程距離200 m ありますけど、だいたい引きつけて撃つのであんまり距離は関係ないかと思います。
あとは命中精度。
威力が現代銃と変わらない。射程距離に関しても200Mまでは飛ぶ。
ただ、そんなに遠くから撃つってことはあまり無い(引きつけて打つ)ので、そこも現代銃に置き換えてもあんまり変わらないんじゃないかなと思っていますね。
命中精度なんですけど、昨日もお話ししたんですけども、
火縄銃の銃身は滑腔砲なので表面がツルツルで、玉自体も球体なので、空気抵抗を受けやすいです。
なので現代銃に比べるとあんまり命中精度は良くないですね。
ただ、命中精度が悪いと言っても、射程50 M 以内(さっき言った引きつけて撃つ距離ですね)においてはそんなに影響はないですね。正直誤差です。
2 CM 右にずれるか、3 CM 左にずれるかとかそういった程度なので、
人間の体の幅で考えた場合はどこかしらには当たると思います。
スナイパーみたく、必ずここに当てなきゃ相手を倒せないっていうわけではないんですよね。
球自体が鉛の弾だったりするので、鉛って毒があるんですよね(しかも体内に蓄積するタイプの毒です。)
一回入っちゃうと外に出ない。
なので、遅かれ早かれは人体に悪影響を及ぼす、そういった武器になりますので
ゆくゆくは致命的なダメージになってしまいます。
他にもね、前装銃射撃連盟で実験がありまして
人の形を模した身長160 cm の的を用意して、30 m の距離で5発撃ったんですけど
5発のうち全てが胸部に着弾した、と。
50 m ではじゃあどうだったかというと、
5発のうち4発が着弾したということです。
つまり威力は現代銃に変わらない。
命中精度も、30 M~ 50 M だったらそんなに変わらない。
ということを考えると、やっぱり現代銃とあんまり変わらないのかなと。
ただやっぱり弱点はあって(さっきも触れましたが)連射性がないことですね。
現代銃だったりすると玉を何発も最初に入れておいて引き金を引くだけで何回も何回も連続で打てます。
ただ火縄銃は前装式なので、一発撃つたびにまた玉を装填しないと打てません。
やっぱりそこは時間がかかってしまいますね。
昔なにかの実験で早打ちの時間を測った記録があるんですけど、どんなに早くても(次の玉を撃つのに)20秒はかかったそうです。
20秒かかるということは、50 m まで引きつけて撃って、外した場合、さすがに20秒あれば50 m って走れちゃうんですよね(平地の場合)。
鎧を着ていたとしてもね、50 m 走るのに20秒以上もかからないのでだいた自分がいるところまで到達されちゃうんですね。
だから、やっぱり外してはいけない。
でも、万が一外したとしても、すぐ次を打てる状況であればその弱点をカバーできるわけですね。
その欠点をカバーしたっていうのが、いわゆる”三段撃ち”ですね。
三段撃ちと言われる射法で撃ってもすぐ次が撃てるようにしていたとされています。
この三段撃ちっていうのは、今現在においては様々な見解があるので、あんまりはっきりと言及はしませんが
何しろ速射性がないっていうところをカバーした撃ち方であることには間違いないと思います。
だから、火縄銃は単体で使うとちょっと心細いかもしれないんですけど、大量に使うことによって弱点をカバーしたり
戦のセオリーとか鎧の意義など様々なものに影響を与えたことは間違いないんじゃないかな、と思っています。
今日は火縄銃の威力と射程についてお話ししてきたんですけど
一言でまとめると
火縄銃の性能は、
連射性能以外は現代銃とほぼ同等である。
射程距離は50 M 以内では、威力も命中精度もとてもすごい。
大量導入という運用方法によって連射性の弱点もカバーできる。
そういった感じになります。
昨日から火縄銃の事をお話しさせてもらってるので
また明日も引きつづき火縄銃のことを話しできたらいいなと思っています。
ちょっと今日は長くなってしまいましたが、どうだったでしょうか。
ということで本日は火縄銃の威力と射程についてお話ししました。
それでは素敵な1日をお過ごし下さい。
佐野翔平でした。
・Twitter【火縄銃男子】しょうへい (@shohei_sano_)
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